あまり知られてないけど、すごく効果のある花粉症対策まとめ

ハイライト

  • [落穴]売れ筋の「花粉用」マスクではアレルゲンだだ漏れ
    • 売れ筋の花粉用マスクでも、除去できるのはせいぜい10〜30ミクロン程度
    • 花粉のサイズは30ミクロンでも、0.76〜7ミクロンのアレルゲン粒子が大量に浮遊
    • すばらしい花粉アレルゲン除去性能のマスクを発見!
  • [落穴]キッチンやお風呂の換気扇を回すと、給気口から花粉が大量侵入
    • 市販の給気口花粉フィルターでは花粉アレルゲンがだだ漏れ
    • → 100円ショップのグッズでちょっと工作して解決
  • 意外と知られてない、すぐれもの花粉症対策アイテム
  • [落穴]キッチンやリビングの空気清浄機が、ろくに機能していない?
    • 炒め物などを作るときに発生する微細な油滴でフィルターが目詰まりして機能しなくなる。
    • 換気扇を回していても、微細な油滴が部屋に流れ出して空気清浄機に吸い込まれる。
  • [落穴] 鼻腔の奥にまで花粉が付着
    • → 「鼻うがい」で洗い流す
    • → [落穴]医師達が水で鼻うがいの危険性を指摘
    • → でも生理食塩水なんてめんどくさくて作ってらんない → 解決策は。。。
  • 本当に効果のある空気清浄機の買い方、使い方
  • インチキ臭い花粉抑制機能をうたう高価な空気清浄機
  • 多くの掃除機が花粉アレルゲンをまき散らしている?
    • → 花粉アレルゲンをまき散らさない掃除機の選び方

売れ筋の花粉用マスクのほとんどで、花粉アレルゲンがだだ漏れ?


たとえば、薬局やコンビニでで売れ筋の、ユニチャームの「花粉用」と書かれた超立体マスクは30ミクロンの粒子を98.1%除去できるとのことです(メーカーによる回答)。
ユニ・チャーム 超立体マスク花粉用ス-パ-ふつう10枚
B0013P5KII
そして、スギ花粉の大きさは30〜40ミクロンですから、花粉自体はかなり除去できます。


しかしながら、空気中には花粉よりもはるかに小さなサイズの花粉アレルゲン含有粒子がけっこうな量浮遊していることが、研究者の方々の実証実験によって明らかにされ、学会に報告されています。


たとえば、以下のグラフは、郡山女子大学の菅原文子らの研究(菅原 文子 宮沢 博 岡部 かおり 住居侵入スギ花粉エアロゾルに関する研究 日本建築学会計画系論文集 第515号 75-81 1999年1月)で測定された、屋内及び屋外で採取された花粉アレルゲン粒子の粒径分布です。

(元の論文は、数字がつぶれて読みにくいので、見やすいように、引用者が赤字の大きな文字にした数字を添えた)


これを見て分かるように、屋内でも屋外でも、
スギ花粉のサイズである30〜40ミクロンよりも、
はるかに小さな0.76〜7ミクロンの
スギ花粉アレルゲン粒子が大量に
浮遊していることが分かります。(40ミクロンより大きな粒子は、複数の花粉や花粉破片とそれ以外の何かがくっついて塊となっている可能性が考えられます。)



さきほどのユニチャームの「花粉用」超立体マスク(30ミクロンの粒子を98.1%除去)でかなり漏らしてしまうと思われるアレルゲン粒子粒径の部分を赤く塗りつぶすと、だいたい以下のような感じになると思われます。

15〜22.5ミクロン、22.5〜30ミクロンの部分が完全に赤ではなく、色を薄く塗ったのは、ほぼ除去可能とうたっている粒子の半分ぐらいのサイズまでなら、漏らしてしまう粒子量はそれほどには多くないだろうという想定からです。


これを見て分かるように、ユニチャームの「花粉用」超立体マスクでは、かなりの量のスギ花粉アレルゲン粒子を漏らしてしまうと思われます。
ユニ・チャーム 超立体マスク花粉用ス-パ-ふつう10枚
B0013P5KII


そして、スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れなのは、ユニチャームの花粉用マスクだけではありません。
電話で各メーカーに除去可能な粒径サイズを問い合わせて回ったところ、
現在市販されている「花粉用」マスクのほとんどは、
スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れ
のようです。


花粉用マスクをしていても
鼻づまりが、いっこうにおさまらない
理由も分かるような気がします。(オイラの個人的体験談)*1


また、山形県衛生研究所の高橋裕一(スギ花粉アレルゲンの飛散動態と花粉アレルゲンの情報化の可能性  環境技術 Vol.32 NO.3 (2003))においても、空気中に飛散する花粉の数と、花粉アレルゲンの量は比例しないことがあることが最近の研究から分かっているとされていますが、これは、何らかの環境条件の違いによって、花粉が壊れて出来た花粉破片と壊れずにそのまま飛散する花粉の比率が変わるためかもしれません。
その原因はまだよく分かっていないようですがですが、気温や湿度によって花粉の破裂しやすさが変わるのかも知れませんし、あるいは、雨の降らない日が続くと、花粉がアスファルトに降り積もり、その上を歩行者や自動車が踏みつぶしていくことで、破砕された花粉が蓄積されるなどの可能性が考えられます。


スギ花粉の飛散量と空気中のスギ花粉アレルゲン濃度の不一致の原因については、永田文男氏*2の走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察記録が参考になります。
永田氏は、3月22日〜5月15日にかけて、自分の車のボンネットに付着した杉花粉を、走査電子顕微鏡で観察しました。


3月22日に採取した花粉


4月11日に採取した花粉


4月20日に採取した花粉


5月15日に採取した花粉


早い時期に採取された花粉はきれいな形状を保っているのですが、日が進むにつれ、しだいに砕けた花粉が多くなっていく様子が見て取れます。


このように、いろいろな情報を総合して判断すると、「花粉用」マスクでは、スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れな可能性はかなり濃厚だと思われます。
そして、それが「花粉用」である限り、どのメーカーのマスクを買ったとしても、結局はアレルゲンがだだ漏れなわけです。


では、「花粉用」がダメなら、「ウイルス用」ではどうでしょうか?
ウイルス用マスクは、花粉よりもずっと細かい粒子まで除去可能とうたっていますし。


超立体 マスクウイルスガード ふつう 5枚
B000KJGP3C


ユニチャームに問い合わせたところ、ユニチャームの「ウイルス用」超立体マスクは、3ミクロンの粒子を95%まで除去できるとのことでした。
この情報を元に、「ウイルス用」超立体マスクが漏らしてしまと思われるスギ花粉アレルゲン粒子の様子と、さきほどと同様の要領でグラフに書き込んでみると、次のようになります。



先ほどの花粉用マスクに比べると、ずいぶんマシですが、それでも、
ウィルス用マスクでも
花粉アレルゲン粒子がだだ漏れ
なことには変わりありません。


結局、スギ花粉アレルゲン粒子を漏らさないマスクというのはないのでしょうか?


そこで、あちこちの会社に問い合わせたところ、
とうとう次のようなマスクを見つけました。


3M社製 N95マスク 8000N95(1箱30枚入)
B001EYQ0N2


3M社の担当者に問い合わせたところ、このマスクは0.06〜0.1ミクロンの塩化ナトリウムが95%除去できたことが確認されているそうです。
このマスクが漏らしてしまうアレルゲン粒子の粒径範囲を、先ほどユニチャームの花粉用マスクやウイルス用マスクについてやったように、赤く塗りつぶすと、次のようなグラフになります。



真っ白ですね。赤く塗りつぶされたところは全くありません。
つまり、この3M社のマスクは、菅原文子氏らの研究で計測された
全ての粒径のアレルゲン粒子を、
ほぼ100%除去します。


ただ、この手の高性能マスクは、呼吸がしにくいのではないかという不安があります。
一般に、フィルターは目が細かいほど通気性能が落ちます。粒子除去性能と通気性能はトレードオフの関係にあるのです。
たとえば、猛烈な勢いでゴミを濾過しなければならないパック式の掃除機は、通気性能の制約から、十分に粒子除去性能を上げられず、室内にアレルゲン粒子をまき散らしてしまうものも多いようですし、換気扇を回したときに給気口から勢いよく入ってくる外気からスギ花粉を除去するための給気口フィルタも、通気性を確保するために粒子除去性能は低く、給気口フィルターを付けていても大量のアレルゲン粒子が室内に侵入します。


ですから、原理的に、この3M社のマスクのように、高い粒子除去性能のフィルタを使っているマスクは、単位面積あたりの通気性能が低いはずですから、装着すると、かなり呼吸が苦しくなってしまうような気がします。


しかしながら、この3M社のマスクは空気清浄機のフィルターと同じ原理で高い通気性能を確保するように設計することで、高い粒子除去性能とそこそこの通気性能を両立させています。


フィルターの目を細かくして、より細かい粒子まで除去できるようにすると、単位面積あたりの通気性能が落ちます。
このため、たとえば、空気清浄機のフィルターは、フィルターの面積を増やすことによって、高い粒子除去性能と通気性能を両立させています。


HITACHI 空気清浄機用交換フィルター (EP-X20用) EPF-X20H
B0002V625Y


空気清浄機のフィルターをよく見ると、蛇腹状に折りたたまれているのが分かります。これによって、実質的なフィルタ面積を増やし、高い粒子除去性能の代償として失った通気性能を取り返しているのです。


市販されている花粉用マスクの多くは、ふにゃふにゃの素材を使っているため、息を吸い込むときに、フィルタが鼻の穴や口に吸い寄せられて凹んでしまい、鼻の穴や口との距離が縮まり、実質的にマスクのごく一部、鼻の穴や口の周辺だけをつかって外気をフィルターして空気を吸い込むことになっています。
このため、息を吸い込むときは、実質的なフィルタ面積が小さく、通気性が悪いのですが、花粉アレルゲン粒子をだだ漏れにしてしまうほどフィルターの目が粗いために、フィルター素材自体の通気性能が高く、これが問題として顕在化していません。


しかし、前述の3M社のマスクのように、粒子除去性能の高いフィルター素材を使ったマスクだと、この問題が顕在化します。通常のマスクと同じような形状のマスクにしたら、通気性能が低下し、かなり呼吸がしにくくなる可能性があります。


この問題を、3M社のマスクは、マスクの素材を形状を維持できるくらいには堅くし、マスクの形状をお椀型に維持することによって、解決しています。(付けてて痛くなるほどには堅くはない。許容範囲内なくらいには付け心地はソフト。)
マスクの素材が堅く、お椀型の形状を維持していると、息を吸うときにフィルターが鼻の穴や口元に吸い寄せられるのが防がれます。そのため、息を吸うときに、マスク全体がフィルターとして機能するため、実質的なフィルタ面積が増えるのです。


3M社のマスクは、このようにして実質的なフィルタ面積を増やしているため、実際に装着してみても、それほど息苦しくありません。少なくとも、私としては十分に許容範囲内です。


ただし、お椀型にすると、フィット性能が下がるという問題があります。通常の立体裁断の不織布の花粉用マスクの場合、柔軟な素材のために顔に頬のあたりでびったり顔に貼り付くため、フィット性能が高いです。これに比べると、お椀型のマスクは、お椀の縁の部分だけが顔面にくっつく形になるので、フィット性能はどうしても下がってしまいます。


この問題を解決するため、3M社のマスクは、けっこう強力なゴムによってお椀を顔面に押しつけることで、フィット性の低さを補っています。
しかし、お椀型のマスクをしっかり顔面に押しつけてフィットさせられるほどの強度のゴムを耳にかけると、耳が痛くなってしまわないでしょうか?
3M社のマスクは、ゴムを耳ではなく、後頭部に回すようにすることで、この問題を解決しています。しかも、ゴムは2本ありますので、かなり力が分散されます。


このように、3M社のマスクは、細部まで巧妙に考え抜かれて設計されていますが、弱点もあります。
それは、顔の形によって、フィットしないことがあるという点です。
売れ筋の不織布の立体裁断のマスクは、柔軟な素材を使っていますから、少々顔の形状が違う人でも、それなりにフィットします。
しかしながら、お椀型のマスクは、柔軟に形状を変えることができませんから、顔の形状が合わない人だと、どうしても隙間が出来てしまうのです。
北里大学医学部衛生学・公衆衛生学助教の和田耕治氏によると、カナダの医療機関で行ったフィットテストの結果では、1〜2割の人が、第一選択のマスクではフィットせず、3種類のマスクを用意した場合は、99%がフィットしたとのことです。
また、この3M社のマスクのアマゾンの評価欄を見ると、フィットした方としなかった方で評価が分かれています:

合う合わないはあるにせよ、呼吸の深い人や動きながら作業する人には
平形マスクでは息を吸う際に貼りついたり隙間が出来るのでカップ型に限りますね

という書き込みがある一方で、

女性の場合カップが大きすぎる気がします。鼻に隙間も出来てしまうので少し高くてもフィット性の高い折り畳み式のソフトタイプの方が良いと思いました。カップ式だと下を向いただけでずれてしまいます。隙間があるとマスクの意味があまり無いような気がします。

という書き込みもあります。


わたしも、このマスクを買って付けてみました。
このマスクは、鼻の形状に合わせるための柔らかい金属板がついており、鼻の部分はそれでフィットすることができます。
しかしながら、私の顔は平均よりやや小さいため(女性用のマスクがちょうどよい)、いちおうフィットはするものの、頬のあたりの密着度が緩い感じがして、少し不安を覚えます。
そこで、大きめの普通の花粉用マスク(ノーズフィットのないもの)をまず装着し、その上からこのマスクをかぶせて使うようにしたら(内側のマスクの微妙な厚みが追加されたせいで)密着度が上がり、完全なフィット感が得られました。
また、マスクを二重に付けているにも係わらず、思ったよりは呼吸は楽で、私としては、十分に許容範囲内でした。


あと値段ですが、このマスクは一箱30枚入りで2390円ですから、1枚約80円です。
ユニチャームの超立体マスクは、アレルゲン粒子が大量にだだ漏れの花粉用で1枚約50円、漏れる量は少なくはなるけど、やっぱりアレルゲン粒子がだだ漏れのウイルス用だと1枚約160円でしたので、それと比較すると、これだけの性能と使い勝手で1枚80円というのは、かなり安いように思えます。
さらに、このマスクは本来は使い捨てですが、このマスクの内側に、ノーズフィットの付いていない、1枚30円くらいの大きなサイズのマスクをすれば、毎日内側の30円マスクを取り替えるだけで、この80円マスクを1週間ぐらいは使えて経済的です。


超立体 マスク花粉用 やや大きめ 30枚
B000LRT2OW


それから、人によってはかなり致命的になってしまう問題が、このマスクにはあります。
それは外見です。
このマスクは、一般的な花粉用マスクとは、かなり形状が違い、目立ちます。
そのうえさらにマスクを二重になどしていたら、かなり怪しい人になってしまいます。
お客さん回りをする営業マンはまず無理で、こんなものを付けるのはプログラマーやデザイナーなど、あまりお客さん回りをしないでも仕事ができる職種の人だけかも知れません。



それでは、お客さん回りをせずに済む職種の方は、このマスクを買えば花粉アレルゲンを防げて、めでたしめでたしという結論でいいのでしょうか?


実は、前述した菅原文子らの研究には、
重大な落とし穴
があります。


彼女らの研究では、スギ花粉アレルゲン粒子を採取するのに、八段型アンダーセンサンプラーという器具を使いました。



この写真の八段型アンダーセンサンプラーは、実際に彼女たちが実験に使用したものとは別のものですが、基本的なメカニズムは同じです。
八段型アンダーセンサンプラーは、空気中の粒子(エアロゾル)を8粒径区分に分けて捕集する装置です。たとえば、この写真のアンダーセンサンプラーは0.43ミクロン以上の粒子を粒子サイズ別に分けて捕集します。


論文によれば、前述の菅原文子らの研究で使用されたアンダーセンサンプラーの捕集粒径区分は、以下のようになります。



これを見て分かるように、この研究では、0.76ミクロン以上の粒子が捕集され、研究対象とされています。
逆に言えば、
0.76ミクロン以下の粒子は捕捉できていない
のです。


ここで問題となってくるのが、0.76ミクロン以下のスギ花粉アレルゲン粒子がどの程度存在するかです。


実は、空気中の杉花粉の個数と、空気中に含まれる杉花粉アレルゲンの濃度が一致しないもう一つの理由の一つとして、杉花粉表面のオービクルと呼ばれる粒子が分離して浮遊している可能性も指摘されています。
たとえば、前述の永田文男氏が、自分の車のボンネットに付着した杉花粉を走査電子顕微鏡で撮影したのが次の写真です。



この写真では、杉花粉の表面に0.2〜0.5ミクロン程度の、金平糖のような形をした粒子と、それよりも小さな粒子のように見える物がビッシリと付着しているのが見て取れます。
この写真で見える粒子はオービクルやセキシンで、そのどちらにも花粉アレルゲン物質の一つであるCryj1(分子量は約4万)が含まれていることが確認されています。



以下は、スギ花粉の構造図です。



(神奈川歯科大学の中村澄夫教授の発表を、永田文男氏がレポートしたものから引用)


また、次の写真は、花粉表面のどの部分がオービクルで、どの部分がセキシンかを示したものです。



(この写真に写っているのは、オービクルがかなりはげ落ちた状態の花粉?)


この図と写真からわかるように、一番外側がオービクル層です。先ほど、最初に示した走査電子顕微鏡写真の、0.5ミクロンくらいの金平糖のような形の粒子が、おそらくはオービクル粒子だと思われます。


その次の層が、セキシン層です。最初の写真で、金平糖のような大きな粒子以外に、細かな粒子状のものがたくさん見えましたが、これが未成熟な小さなオービクルなのか、それともセキシンなのかは、私には判然としません。
どちらも、Cryj1という花粉アレルゲン物質が大量に含まれているという点では、我々花粉症患者の敵であるということに、変わりはないのですが、構造上、オービクルの方が花粉から分離しやすそうではあります。


オービクル及びセキシンに花粉アレルゲン物質Cryj1が含まれていることは、免疫電子顕微鏡法*3で確かめられています。以下の写真は、神奈川歯科大学の中村澄夫教授の講演で発表されたもので、免疫電子顕微鏡法でオービクルとセキシン部にCryj1が多く含まれている様子を観察したものだとのことです(講演を聴きに行った永田文男氏のレポートから引用)。



(小さく黒く見える金粒子があるところに、花粉症を引き起こすアルゲンが分布していることが見て取れます。)


スギ花粉には、Cryj1とCryj2という2種類の杉花粉アレルゲン物質が含まれています。オービクルとセキシンにはCryj1が、花粉内部のデンプン粒にはCryj2が含まれています。Cryj2の分子量は、Cryj1とほぼ同じです。
セキシンにCryj1が含まれていることが、Cryj1より作製した抗体を用いた電顕レベルの免疫金コロイド法によって確認されたことについては、東京都「花粉症対策総合報告書」(平成10年発表)でも言及されています。


このオービクルのサイズについては、別の文献では「1ミクロン程度」や「2ミクロン」などと書かれていることがあり、永田氏の走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロン程度というサイズ計測が誤っている可能性も考えられます。また、逆に、他の文献の記述が誤っているか、もしくは、計測精度などの問題で、実際には0.5ミクロン程度のものを「1ミクロン程度」という測定しかできなかった可能性もあります。
実は、ここは非常に重要なところです。永田氏の計測したオービクルサイズと、他の文献に記載されているサイズのどちらの信憑性が高いかは、様々な花粉症対策商品の有効性を評価するのに重要な意味を持つケースが出てくる可能性が考えられます。


もちろん、ほとんどの花粉用マスクは数ミクロン〜数十ミクロンという一桁〜二桁大きな粒子サイズの除去用に作られているので、オービクルのサイズが1ミクロンであろうが、0.5ミクロンであろうが、どっちにしろ、花粉アレルゲンはだだ漏れでなので、そんな細かなサイズの違いなど、どうでもいい話です。


しかしながら、たとえば、料理などで換気扇を回したときに、給気口から花粉が入ってくるのを防ぐ市販の給気口フィルターでは、その物理的な制約から、0.3〜0.5ミクロン粒子の除去率が31.50%〜46.50%、1.0〜2.0ミクロン粒子の除去率が56.50%〜70.60%という性能のものが出回っていたりします。
このケースでは、オービクルのサイズが1〜2ミクロンであるなら5〜6割を除去できますが、0.5ミクロンであれば、3〜4割程度しか除去できないことになります。なので、オービクルのサイズの違いがやや意味を持ってきます。


また、三洋の掃除機の標準のパックでは、0.5〜1ミクロンの粒子を6割程度除去、2ミクロンだとほぼ全部除去できるという性能だとのことです。これもきわどい数字で、オービクルのサイズが0.5ミクロンか、それとも1〜2ミクロンかで、掃除機の排気口からまき散らされるアレルゲン粒子の量が数十パーセントも変わってきそうです。


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B00137VGL6


掃除機の排気口からアレルゲン粒子がまき散らされるのを防ぐために、三洋のハイグレードの掃除機パックを使うとしても、ハイグレードパックの除去性能は「0.5〜1ミクロン粒子をほとんど除去する」という回答でしたから、もしオービクルのサイズが1〜2ミクロンであれば、標準パックではなく、ハイグレードの掃除機パックを買った方がよさそうだとということにもなりかねません。
また、たとえハイグレードの掃除機パックを使ったとしても、「0.5〜1ミクロン粒子をほとんど除去する」という性能に対し、0.5ミクロン程度というオービクルのサイズはけっこうギリギリであり、不安に思う人もいるかも知れません。
そういう人は、「本当にハイグレードのパックを使えばパック式の掃除機でも大丈夫だと言えるのか?それとも0.3ミクロン粒子をほぼ100%除去できるというシャープのキレイオンを使ったほうが安心なのか?」という、けっこう大きな判断に影響を及ぼしかねません。
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このように、オービクルの実際のサイズはけっこう重要なので、永田氏が走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロンというサイズと、他の文献に書かれている「1〜2ミクロン程度」という記載では、どちらの方が信憑性があるのか、考察してみました。


で、結論から言うと、少なくとも東京都のスギ花粉のオービクルサイズに関しては、永田氏が走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロンというサイズの方が信憑性が高いと思われました。
その理由は以下の通りです。

(1)永田氏は3〜5月のかなり長期間にわたって、何度もスギ花粉を観察した。


(2)成熟したスギ花粉だけでなく、未成熟のスギ花粉も観察した。


(3)特定のスギの木の花粉ではなく、自動車のボンネットに付着した花粉を観察した。


(4)オービクルのサイズが1ミクロン程度としている文献(ネット上の文章)で、計測条件の詳細が記載されているものが見つからなかった。


まず、花粉のオービクルのサイズは、スギ花粉の成熟度によって変化する可能性があります。
もし、永田氏の観察が1回だけであれば、オービクルのサイズが特別小さいような成熟度の花粉が飛来する、特別な時期だった可能性があります。
しかしながら、永田氏は3〜5月という長期間に渡って複数回観察しているため、たまたま特別な時期の、特別なサイズのオービクルを観察した可能性は少ないと思われます。
また、永田氏がある特定のスギの木から花粉を採取したのであれば、たまたまその杉の木が、特別小さなサイズのオービクルをもつスギ花粉であるような、特殊なスギの木だった可能性があります。しかしながら、彼は飛来した花粉が自動車のボンネットに付着したものを観察しており、たまたま特殊な杉の木だった可能性は低そうに思われました。
さらに、彼は、ボンネットに付着したスギ花粉だけでなく、雄花が着いたスギの枝を採取し、そこに詰まっている未成熟のスギ花粉も、走査電子顕微鏡で観察しています。未成熟のスギ花粉の電子顕微鏡写真を見ても、やはりオービクルのサイズは成熟したものとそれほど大きな違いがなかったことが見て取れました。
一方で、オービクルのサイズが1ミクロン程度だとする文献の根拠となるオービクルのサイズ測定の条件の詳細が記載されている文章は、ネットをいくら検索しても見つからず、この「1ミクロン程度」という記載の信憑性は薄いと思われました。もしくは、オービクルのサイズの正確な違いが問題となるということについて、研究者の意識が薄いため、かなりおおざっぱな記載をした可能性が考えられます。


さらに重要なのは、花粉が破砕されて飛び散るのは、オービクルだけではないので、花粉が破砕されるときに飛び散る0.5ミクロンよりもはるかに小さなアレルゲン物質含有粒子がそれなりの量浮遊している可能性もあるということです。


そう考えると、空気清浄機はHEPAよりもULPAのものを使った方がより多くのアレルゲン物質を除去できる可能性があるし、掃除機も、パック式の掃除機でハイグレードのもの(0.5〜1ミクロンをほぼ除去)を使うより、0.3ミクロンをほぼ100%除去するシャープのキレイオンを使う方が、掃除機の排気口からまき散らされるアレルゲン粒子が少なくなるという可能性があるということです。


ただし、一方で、オービクルのサイズが0.5ミクロンだからといって、それが即、「0.5ミクロンの粒子が大量に浮遊している」という結論には直結しません。
菅原文子らの実験では、本来の花粉サイズである40ミクロンよりも大きな花粉アレルゲン粒子が採取されています。すなわち、花粉だけでなく、花粉破片やオービクルも、そのほとんどがくっついて塊になって浮遊している割合が多い、という可能性も考えられます。
もし、単体で浮遊するオービクルがごくわずかで、ほとんどのオービクルはくっつき合ってもっと大きな粒子として空気中を浮遊しているなら、0.5ミクロンという粒子サイズにこだわりすぎると、さまざまな花粉症対策商品の実質的なアレルゲン粒子除去能力の評価をゆがめてしまうことにもなりかねません。


一方で、現時点ではその辺はまだよく分かっていないので、0.5ミクロンのオービクルが単体で大量に浮遊している可能性がある程度高いという前提で花粉症対策商品の有効性を評価しても、それほどはずしていないのではないかと思われます。


だいたいこれくらいで、先ほどの0.06〜0.1ミクロン粒子を95%除去可能な3M社マスクの有効性が評価するための情報はそこそこ出そろった感じがします。
3M社製 N95マスク 8000N95(1箱30枚入)
B001EYQ0N2


このマスクが除去できないアレルゲン粒子が空気中に浮遊している可能性もそれなりにありますが、花粉の構造からして花粉から遊離しやすい0.5ミクロン程度のオービクルは十分に除去可能ですし、例えより細かいセキシンが砕け散ったとしても、セキシンの粒ですら、先ほどの写真では0.1〜0.2ミクロン程度に見えましたし、オービクルより小さな花粉破片についても、ある程度の除去性能は期待できそうにも思われます。



キッチンやお風呂の換気扇を回すと、フィルターを付けてても給気口から花粉アレルゲンが大量侵入?


料理の時には、換気扇を回して排気をしますよね。換気扇は、部屋の中の空気を吸い出して外に捨てるわけですから、当然、入れ替わりにどこからか外気が入ってきます。そのための穴が給気口で、どの家でも部屋のどこかに給気口の穴が開いていると思います。
換気扇を回すと、この穴から外気がどんどん入ってきます。もし、この給気口に花粉フィルターを付けずに換気扇を回すと、
給気口からどんどん花粉が入ってきます


これを防ぐために、花粉症の方は、給気口には、たとえば以下のような給気口フィルターを付けている方も多いでしょう。


ブレスト 給気口用フィルター・エリア 125 E125
B000FZ5690


エリアという給気口フィルターの商品仕様説明のWebページに記載されたフィルター性能データを元に、前述した菅原文子らの論文で出てきたスギ花粉アレルゲンの粒径分布図のうち、このフィルタが数十パーセントの単位でアレルゲン粒子をだだ漏れにしてしまう粒径分布を、大まかに赤色で塗ってみましょう。


商品仕様によれば、このフィルタの粒子除去性能は以下の通りです。


測定風速 (m / min)

1.5

3

0.3〜0.5μmの捕集効率

46.50%

31.50%

0.5〜1.0μmの捕集効率

55.10%

40.00%

1.0〜2.0μmの捕集効率

70.60%

56.50%

2.0〜5.0μmの捕集効率

83.10%

72.50%

5.0μm以上の捕集効率

94.20%

91.20%
また、このフィルタが漏らしてしまう粒径範囲を赤く塗りつぶしたのが以下のグラフです。



このフィルタは、かなりのアレルゲン粒子を室内に侵入させてしまうものの、それなりに効果的に機能していることがわかります。
その理由は、屋内より屋外の方が、粒径の大きな花粉アレルゲン粒子が多く、粒径の小さなアレルゲン粒子は、室内に比べるとやや少ないというものです。


これを見る限りでは、花粉症の症状の軽い方や、少々の鼻水鼻づまりはさして気にならないという方は、この換気口フィルターで妥協してもよいと考える方もおられるかもしれません。


しかし、花粉症の症状がそこまで軽くない方は、換気扇を回すたびに、これまとまった量のアレルゲン粒子が室内に侵入するのを嫌がる方も多いかと思われます。


それにしても、給気口フィルターは、なんでこんなに性能が悪いのでしょうか?
それは、フィルタ面積が小さいからです。


しかし、なぜ、フィルタ面積が小さいと、性能が悪くなるのでしょうか?
それを理解するには、フィルタの性能を決定している物理的要因を把握する必要があります。


フィルターの目を細かくすればするほど、より細かい粒子まで捕集できるようになりますが、その分だけ空気が通りにくくなり、単位面積あたりの通気性能が落ちます。
このため、HEPAフィルターのような目の細かいフィルターを使う空気清浄機では、フィルター面積を巨大化しています。かなり面積の大きなフィルターを、蛇腹状に折りたたんで使っていますが、折りたたまれたものですら、数十センチ×数十センチのかなり大きなサイズになっています。
空気清浄機のフィルターがあれほど大きなサイズなのは、ちゃんと理由があるのです。


フィルターを小型化するには、次の4つの方法が考えられます。

(1)フィルターの蛇腹折りをさらに緻密にする


(2)空気をゆっくり濾過するようにする


(3)フィルターの目を粗くする


(4)フィルターの厚みを薄くする


まず、(1)の蛇腹折りの緻密化として考えられるのは、たとえば人間の小腸の襞の構造のように、蛇腹折りの一つの山を拡大してみると、その山自体が細かな無数の蛇腹折りからなっているような、フラクタル的というか再帰的蛇腹折り構造をしたフィルターにすることです。しかし、これは技術的な問題や、やコストが見合うのかという問題があります。


次に(2)の空気をゆっくり濾過する方法ですが、これは、キレイオンなどのサイクロン式の掃除機の排気口に付けられたHEPAフィルタがこれに相当すると考えられます。たとえばサイクロン式掃除機のキレイオンの場合、最初に遠心分離でゴミを十分にこし取り、こし取り切れなかったぶんを、HEPAフィルタで濾過する方式になっています。このため、パック式の掃除機に比べると、単位時間あたりにフィルターを通過する空気量は、はるかに少なくなっています。


また、(3)のフィルターの目を粗くする方法ですが、これはパック式の掃除機で行われている方法です。
パック式の掃除機の場合、吸い込んだ空気を直接フィルターで濾過する方式ですから、猛烈な勢いで空気がフィルターを通過することになり、少なくともフィルターの一つはかなり空気抵抗の小さいものでなければなりません。また、パックは使い捨てなので、あまり高度な構造にするとコスト的に見合いません。そのため、シャープのキレイオンのような、排気口にHEPAフィルタの付いたサイクロン式の掃除機に比べると、目の粗いフィルタになっているようです。
たとえば、キレイオンでは「排気中の0.3μm以上の微細じんをほぼ100%キャッチ」とあるのに対し、三洋の現在のパック式掃除機の場合、標準的な紙パックは0.5〜1ミクロンの粒子は6割しか捕集できません。最高グレードの紙パックとなると、「0.5〜1ミクロンの粒子をほとんど捕集する」とのことですが、やはりキレイオンよりはかなり性能が落ちます。*4


最後の(4)のフィルターの厚みを薄くする方式ですが、wikipediaによると、ULPAフィルタがこちらのやり方をしているようです。前述したように、HEPAフィルタが
「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」
と規定されているのに対し、ULPAフィルタは
「定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」
と規定されています。
ただし、厚みを薄くすることで、強度が弱くなるという問題があるようです。


こうしてみると、この給気口フィルターの性能が、空気清浄機よりもはるかに劣る理由がよく分かります。
換気扇は、かなりの勢いで空気を吸い込みますから、密閉性の高い家屋の場合、給気口からはそれに見合った勢いで外気が入ってきます。
つまり、給気口フィルターには、かなりの通気性が必要とされます。
そして、それだけの通気性を、小さな面積で実装しようとすると、次のどれかにしなければなりません。

(1)フィルターを再帰的蛇腹構造にする


(2)フィルターの厚みを檄薄にする


(3)フィルターの目を粗くする

このうち、(1)は技術的な問題をクリアしたとしても、かなりのコストになってしまう可能性があります。
また、(2)厚みを檄薄にするのも技術的に難しそうだし、コストがかかりそうですし、強度の問題もでそうです。
で、結局、技術力がいらず、コストもかからず、強度の問題も出ない、(3)に落ち着くことになったのではないかと。


ということで、この給気口フィルターではスギ花粉アレルゲンがだだ漏れの可能性が高いので、別の、ちゃんとした給気口フィルターを購入したくなります。
ところが、困ったことに、現在市販されている給気口フィルターはほぼ全て似たりよったりの形状と性能であり、どれも花粉アレルゲンがだだ漏れの可能性が高いです。
「ちゃんとした給気口フィルター」を売っている店を探したのですが、少なくとも安価なものは、見つかりませんでした。


それでは、通気口フィルターを2枚重ねて使ってみるというのはどうでしょうか?
たとえ、アレルゲン粒子の除去性能が50%だったとしても、2枚重ねれば、除去性能は75%になるはずです。


しかしながら、この方法だと、給気口フィルターの粒子除去性能が上がる一方で、通気性能が低下します。
吸気口の通気性が低下すると、換気扇の吸引力が低下し、料理の時に発生する、油滴を含んだ空気を換気扇が全部吸い込みきれずに、油滴が部屋の中に拡散し、それがキッチンやキッチンに続く部屋にある空気清浄機のフィルターを目詰まりさせ、空気清浄機性能が劣化してしまう恐れがあります。空気清浄機のフィルタが油滴で目詰まりしてしまうと、むしろ、部屋の中のアレルゲン粒子の量は増えてしまいます。


さらに、フィルターによって通気口の通気性能が低下している状態で換気扇を回すと、窓やドアなど、部屋のあちこちのわずかな隙間から花粉が侵入してきます。


このため、給気口フィルタを2枚重ねるという方法では問題は解決できないことが分かります。


そこで次に、通常の空気清浄機用のフィルターを給気口に取り付けるという方法を考えてみます。


HITACHI 空気清浄機用交換フィルター (EP-X20用) EPF-X20H
B0002V625Y


もちろん、サイズが合いませんので、100円ショップなどで、衣類などを格納する大きめのビニール袋を買ってきて、



切り開いて、



切り貼りして、



「ピラミッドを平たく押しつぶし、先端をちょん切った」のような形状を作り、



それでフィルターと給気口をつなぎます。


ただし、これだけでは問題がおきます。
給気口フィルターは、空気清浄機と異なり、外気が通過します。住んでいる場所や生活スタイルにもよりますが、一般に、室内の空気に比べると、外気は汚れていることが多いですから、フィルターの目詰まりが早いのです。
すなわち、フィルターの寿命が短くなってしまうのです。


この問題を解決するには、前述の性能の悪い小さな給気口フィルターを併用する方法が考えられます。


まず、前述の性能の悪い小さな給気口フィルターを、普通に給気口に取り付けます。
そのあと、その給気口フィルターに、先ほどビニールシートで接続した空気清浄機用のフィルターをつなぐようにします。
すなわち、市販の給気口フィルターをプレフィルタとして使うわけです。


こうすると、小さな方の給気口フィルターは直接外気に晒されますので、目詰まりが早いですが、そちらはどうせ安いものですので、頻繁にどんどん交換すればいいです。
また、ピラミッドの底の部分にあたる空気清浄機用フィルターは直接外気に晒されるわけではありませんので、寿命がかなり長くなります。
この方式だと、給気口フィルタを二枚重ねたときの問題は起きません。
空気清浄機のフィルターの通気性能は換気口フィルターよりもはるかに高いからです。


この方法では、もう一つの問題点があります。
前述したように、0.1ミクロンサイズの花粉アレルゲン粒子が浮遊している可能性もありますが、空気清浄機の場合、0.3ミクロン粒子までしか十分に除去できず、0.1ミクロン粒子となると80%しか除去できないとしても、これはあまり問題になりません。
なぜなら、空気清浄機の場合、部屋の空気をぐるぐると何度でもこし取ることができるからです。
たとえば、0.1ミクロン粒子を80しか除去できない空気清浄機でも、同じ空気を5回こし取れば、0.1ミクロン粒子の99.968%を除去することができます。


しかしながら、給気口フィルターの役割は、外気が室内に侵入してくるとき、それに含まれているアレルゲン粒子を除去することですから、一発勝負です。1回の濾過で、アレルゲン粒子を漏らしてしまったら、それは部屋の中に入ってしまい、空気清浄機がその濾過に成功するまで、それは部屋を循環し続けるのです。


こう考えると、給気口フィルタには空気清浄機よりも高い粒子除去性能が欲しくなってくる人もいるかも知れません。
なので、微少なサイズのアレルゲン粒子が部屋に入ってくる可能性を気にする人は、念には念を入れて、HEPAフィルタ(0.3μmの粒子に対して99.97%以上)より、ULPAフィルタ(0.15μmの粒子に対して99.9995%以上)を使っておくというのもありかもしれません。


National プラズマULPAフィルター EH3561F1
B0000C9HH5
値段的にも、ULPAはHEPAよりも1〜2割程度高いだけですし。



しかし、せっかくここまできちんとした給気口対策をしたとしても、住宅が古かったりすると、部屋の窓やドアに隙間があって、換気扇を回すと、給気口だけでなく、あちこちの窓の隙間から外気が入ってきてしまうことがあります。いや、新築のマンションで、そうとう密閉性の高い家ですら、換気扇を強にして回しながら、窓の近くで耳をすますと、外気が侵入してくる音が聞こえることがあります。


この問題に対処するために、花粉のシーズンだけ、窓を布テープで密封してしまうという方法があります。
花粉は早いときで1月から飛び始めますから、年末の大掃除が終わった後、部屋の窓の隙間という隙間を、布テープで念入りに密封してしまいます。後ではがすとき面倒ですが、これで花粉の季節も鼻づまりに悩まされることなく熟睡できるのですから、それをやるだけの価値はあるかもしれません。
家族で住んでいる方などは家族に迷惑がかかるのでできないかもしれませんが、独り暮らしでワンルームマンションに住んでいる花粉症の方などは、どうせ花粉の季節は窓を開けることはほとんどないでしょうから、いっそのこと、花粉の季節は部屋を密封してしまうというのもありかもしれません。


また、玄関のドアは、さすがに布テープで密封するわけにはいきませので、玄関のドアの隙間はスポンジテープで塞ぐようにします。
スポンジテープではどうしても完璧な密封性を得られない場合もありますので、その場合、玄関に玄関専用の空気清浄機を置くようにします。数千円の安物の空気清浄機で十分です。そして、玄関とリビングの間のドアは常に締め切っておき、玄関の空気清浄機は回しっぱなしにしておきます。これにより、換気扇を回したときに、玄関区画に少し花粉アレルゲン粒子が侵入したとしても、リビングに到達する前に、玄関の空気清浄機に回収されます。



それから、このエリアという給気口フィルターを買うときには、一つ注意点があります。それは、給気口のサイズによって、取り付ける給気口フィルター器具が異なるという点です。サイズを間違えると、うまく取り付けられないことがあるので、注意してお買い求めされた方がよいと思います。
サイズは、以下の3つがあります。

「エリア100」直径12.3〜15.5cmの丸型給気口用


ブレスト 給気口用フィルター・エリア 100 E100
B000FZ2CUG


「エリア125」直径15.5〜18.0cmの丸型給気口用


ブレスト 給気口用フィルター・エリア 125 E125
B000FZ5690


「エリア150」直径18.0〜21.2cmの丸型給気口用


ブレスト 給気口用フィルター・エリア 150 E150
B000FZ2CVU


また、このエリアというフィルターには、「アレルゲンタンパク無害化フィルタ」というのがありますが、実質的な効果はほとんどないので、それを買うのはやめて置いた方がいいです。



キッチンやリビングの空気清浄機がろくに機能してない!?


キッチンや、キッチンに繋がったリビングに置かれている
空気清浄機が、音ばかりして、ろくに機能していない
ことがあります。


ほとんどの空気清浄機の取扱説明書には、
空気清浄機は、油滴の浮遊するところでは使用できない
と書いてあります。



キッチンで野菜炒めを作ると、かなりの量の油が気化し、空気中に大量の油滴が発生します。
もちろん、換気扇をフルパワーにしてそれらの油滴を含んだ空気を吸い込んで外に排出するわけですが、必ずしも全ての油滴が換気扇で除去されるわけではなく、残った油滴が空気清浄機に吸い込まれて、フィルターを目詰まりさせてしまうのです。


この問題を解決するには、いくつかの対策が必要です。


まず、料理中や食事中は、必ず空気清浄機をオフにします。料理中や料理後しばらくの間は、空気中に油滴がたくさん漂っているからです。


それから、料理で発生した油滴を含んだ空気を換気扇が吸い込む力が弱いと、油滴を含んだ空気が部屋の中に拡散してしまいます。
これを防ぐために、常に換気扇のパワーが最大限発揮できるような施策をします。


料理の油滴がレンジフードに付着して目詰まりすると、換気扇のパワーが劣化します。これを防ぐには、レンジフードを頻繁に掃除する必要があるのですが、普通はめんどくさくてそんなことはやってられません。
そこで、100円ショップで売っているレンジフードフィルターを換気扇に取り付けます。レンジフードフィルターが油で汚れてきたら、すぐに捨てて、次のレンジフードフィルターに取り替えます。レンジフードフィルターは、たくさん買いだめしておいて、気軽にどんどん取り替えるようにします。


また、給気口の通気性能が悪いと、換気扇の吸引力が劣化します。給気口から入ってくる花粉を除去するためのフィルターを取り付けるときは、アレルゲン粒子除去性能だけでなく、通気性能に十分に気をつける必要があります。


それから、料理中及び料理後しばらくは、エアコンやサーキュレーターを止めておきます。エアコンやサーキュレーターが回っていると、部屋の空気を循環させてしまい、油滴を含んだ空気を部屋に拡散させてしまう恐れがあるからです。
花粉が1月から飛散する年もありますが、寒い時期に、料理中と料理後しばらくの間エアコンを止めておいても困らないように、ホットカーペットなど、エアコンやサーキュレーターのように、空気を循環させない暖房手段を用意しておくといいかもしれません。


また、料理中や料理後しばらくは、換気扇を回しっぱなしにしておく方法も考えられますが、これをやるべきかどうかは、住居の密閉度や換気口フィルターの粒子除去性能に依存します。
築年数が浅くて家賃の高いマンションなどは、密閉性が高く、換気扇を回すと、外気の大部分が給気口から入ってくるようなものもあります。あるいは、前述したように、花粉の季節だけ、窓の隙間を布テープで完全に密封してしまうような人もいるかもしれません。
しかしながら、古い、木造、安い家賃のアパートやマンションで、とくに密閉化対策をしていない場合、密閉性が低く、換気扇を回すと、給気口からだけでなく、窓やドアの隙間からも外気が入ってきます。
したがって、密閉性の低い住居の場合、換気扇を回しすぎると、花粉タップリの外気が窓やドアのわずかな隙間から部屋に侵入してきてしまう可能性もあります。


また、それなりに密閉性の高い住居であっても、密閉性は所詮程度問題に過ぎず、換気扇を回せば、家のどこかのわずかな隙間から、少しは花粉が侵入しているかもしれません。


さらに、前述したように、市販の花粉用給気口フィルタはどれも粒子除去性能が低く、花粉アレルゲン粒子がだだ漏れなので、市販の花粉用給気口フィルタを使っている人、もしくは、給気口フィルタを付けていない人は、換気扇を回せば回すほど、大量の花粉アレルゲン粒子が部屋に入ってきます。


この問題がありますので、料理が終わってから長時間にわたって換気扇をフルパワーで回しておくのは、問題があるケースが結構あると思われます。しかし、料理後すぐに換気扇を止めてしまうと、空気中の油滴が十分に除去できず、空気清浄機フィルターがすぐに油滴で目詰まりしてしまうというジレンマがあります。


この問題を正攻法で解決するには、前述したように、花粉の季節は窓の隙間を布テープで密封した上で、給気口に空気清浄機用のフィルタを取り付けます。


しかし、それをせずに、この問題を解決する方法があります。
それは、花粉の季節は、油滴が発生するような料理を一切作らない、ということです。


結局、花粉症の人は、次の3つの選択肢の中から、究極の選択をしなければならないのです。

(1)花粉の季節は、野菜炒めやポークソテーは一切自宅で料理できない。


(2)花粉の季節も野菜炒めは食べられるけど、部屋の中が花粉アレルゲン粒子で汚染されて、鼻水鼻づまりで悩まされる。


(3)花粉の季節は、窓を布テープで密封して、窓を開けられなくなる。

意外と知られていない、すぐれもの花粉症対策アイテム


マスク、給気口フィルタ、空気清浄機の3つは、極めて効果が大きいこともあって、重要な花粉症対策アイテムとして、多くの花粉症患者に使われています。


これら3つに匹敵する、花粉の季節に大活躍の強力な花粉症アイテムが、もう一つあります。
それは「花粉吸引ブラシ」です。
花粉吸引ブラシHC-SB-100
B001O0M788


この吸引ブラシが活躍するのは、
箱、バッグ、袋に入ったものを、外部から部屋の中に持ち込み、
開封して中から品物を取り出すときです。


花粉の季節は、
外で荷造りされて送られてきた品物の場合、
その品物に花粉が付着していることは多いです。


そういう品物が入った箱を開封し、中から品物を取り出すとき、
その品物に付着した花粉をどうやって除去するかが問題です。


まず、箱から出した品物に、掃除機をかけるという方法を考えてみます。
すると、たとえば三洋のパック式の掃除機の場合、標準的なパックでは、0.5〜1ミクロンの粒子ですと、6割程度しか捕集できません。
このため、使用している掃除機のタイプによっては、スギ花粉オービクルのように0.2〜0.5ミクロンしかないサイズのものに掃除機をかけると、スギ花粉アレルゲンをまき散らしてしまう恐れがあります。
また、スギ花粉アレルゲンの粒子サイズにも対応した高性能掃除機を使うという方法もありますが、そもそもいちいち大きな掃除機を
引っ張り出してくるのはめんどくさいです。
さらに、素材によっては掃除機では、吸引力が強すぎて品物の一部まで吸い込もうとしたりして、花粉だけ吸い取りにくいものもあります。
一方で、ぬれ雑巾や濡れ布巾で拭くのも、やはりいちいち雑巾を絞ってもってこなければならないし、そもそも、素材が布だったり食品だったりして、雑巾で拭きにくいケースがあります。
このため、荷物に付着した花粉を吸い取るには、結局花粉吸引ブラシを使うことになります。


掃除機やぬれ雑巾に比べると、この花粉吸引ブラシは小型で使いやすく、面倒がありません。
また、パック式の掃除機(標準のパック)よりも細かいアレルゲンの粒子まで除去できますので、吸引ブラシによって空気中にまき散らされるアレルゲン粒子は、パック式の掃除機(標準のパック)のように酷くはありません。
たとえば、株式会社H&Cの花粉吸引ブラシの場合、1〜2ミクロンの粒子を99%、0.3ミクロンの粒子を75%除去するとのことです。


オービクルのサイズが0.5ミクロンであることを考えると、かなりの性能であるように思われます。


ただ、花粉症の症状が重い方の場合、0.3ミクロンの粒子を25%漏らしてしまうのすらイヤがるかもしれません。
その場合、ぬれ雑巾の使えるような、表面がつるつるのものはぬれ雑巾で拭き取り、ぬれ雑巾が使えない布、紙、野菜などの材質の品物に関しては、多少面倒でも、0.3ミクロンの粒子をほぼ100%除去できるシャープのキレイオンなどのような、超高性能掃除機の吸引力を「弱」にして、吸い取り口を付け替えて、花粉を吸い取る方が良いかも知れません。


SHARP KIREION 高濃度「プラズマクラスター」技術搭載 サイクロンクリーナー パワーヘッド シルバー系 EC-VX200-S
B001JA41PA


この花粉吸引ブラシは、箱から荷物を取り出すときに役立つだけではありません。
たとえば、宅急便の荷物を受け取った場合、そのたびに、荷物をもって玄関の外へ出て、荷物に付着した花粉を払い落とすのは面倒ですし、そのたびにいちいち玄関の外に出ると、玄関から部屋に侵入する花粉の量が多くなります。
ですので、宅急便の荷物を受け取ったら、この花粉吸引ブラシで花粉を吸引することで、花粉の除去ができます。
(もちろん、これも、より完璧をきすなら、シャープのキレイオンでやった方がよい)


また、スーパーや100円ショップでたくさんのものを買った場合、
スーパーのビニール袋に入った一つ一つの品物に花粉が付着しています。
それを吸い取るのにも使えます。


さらに、外出して帰ってきたとき、玄関の外で服や荷物に付着した花粉を手で払い落とすと、花粉が舞い上がります。
玄関を出てすぐのところで花粉を手で払い落とすと、玄関を開けたときに、空気中を舞い上がった花粉が部屋に入ってきます。
また、玄関から少し離れたところで、花粉を払ったとしても、舞い上がった花粉が鼻や目に入ります。
それを考えると、外出して服やバッグに付着した花粉も、この花粉吸引ブラシで吸い取るのが良さそうです。

鼻腔の奥に入り込んだ花粉アレルゲンを洗い流す「鼻うがい」とその危険性


鼻腔の奥に入り込んだ花粉アレルゲンを洗い流す方法として、「鼻うがい」をする人も多いようです。



「鼻うがい」はインドでは昔から行われているヨガの方法の一つのようです。




「鼻うがい」は、花粉症対策として人気があるようですが、
安易に行うと鼻粘膜の線毛や粘膜面の機能を損ないやすいため、最近では鼻うがいを推奨しない医師も増えているということです。
専門家の先生方によると、鼻洗浄の注意点は概ね以下のようです。

1. 鼻洗浄は、鼻腔内を清浄化することで鼻粘膜および自然口の状態を改善するために行う。
2. 副鼻腔内に洗浄液が達することはない。
3. 鼻洗浄器を使用して鼻うがいをする場合、粘膜に与える影響を少なくするため、洗浄液は25度〜30度の生理食塩水(0.9%の食塩水)を用いる。
4. 普通の水道水を使うと、浸透圧の関係で鼻粘膜に非常な悪影響を与える。これは水道水に含まれる残留塩素の影響を遙かに上回る。多少濃度が違っても、必ず食塩水を使うこと。
5. 洗浄は前屈みになって時々休憩しながら行い、片側の鼻穴から注入した液がもう一方の鼻穴から流れ出るようにする。洗浄管先端の方向は鼻の穴の向きに合わせる。鼻底と平行にし、前方(鼻背)には傾けないこと。
6. 水圧が高かったり、注入中に唾や洗浄液を飲み込もう(嚥下運動)とすると、開いた耳管に洗浄液が入り中耳炎などの原因になることがある。
7. 洗浄終了後は、前屈みのまま頭を左右に傾け、鼻腔内に残っている洗浄液を鼻から排出すること。鼻腔内に洗浄液が残っている状態で鼻をかむと、中耳炎の原因になる。
8. 一日に何度も洗浄することは避け、鼻や喉に急性炎症がある時も鼻洗浄は中止する。
9. 後鼻漏がある場合は鼻腔内に洗浄液が残りやすいので、鼻洗浄を行わない方が良い。


しかしながら、
いちいち生理食塩水を作るなど、めんどくさくてとてもやってられません。


ですから、鼻うがい専用液を使って鼻うがいをした方が、はるかに簡単です。


ハナノア 300ml
B000FQ4XO8


私はこの鼻うがい専用液をつかっていますが、水で鼻うがいをするように、鼻の奥が痛くなるようなことはありません。
またコスト的にも15回分で630円ですから、1回あたり42円しかかかりません。
鼻うがいをするのは、外出先から自宅に帰ってきたときぐらいですから、そんなにお金のかかるものでもありません。



本当に効果的な空気清浄機の買い方と使い方


結論から言うと、花粉症対策を最優先する場合、空気清浄機は一台数千円の安いものを、主要な部屋の数だけ買うのが良いと思われます。
コンセプトは、自宅の宇宙船化です。


前述したとおり、空気清浄機の花粉除去機能自体は、数万円のものでも数千円のものでもほとんど変わりませんから、花粉症対策として空気清浄機を購入するという前提のもとでは、プラズマクラスターイオンうんちゃらというようなチャラチャラした余計な機能のついている高価な空気清浄機を買う意味はほとんどないと思われます。


一方で、一台数千円の安い空気清浄機を、寝室、リビング、玄関と、各部屋に一つずつ設置すると、その効果は絶大です。
とくに、玄関に設置した数千円の安物空気清浄機の効果は劇的です。


玄関に空気清浄機を置いていない場合、リビングの空気清浄機で玄関の空気まで浄化しようとすると、いったん玄関とリビングの間のドアを開放し、玄関から入ってきたアレルゲン粒子タップリの空気を、いったんリビングに引き入れなければなりません。しかし、そんなことをすれば、リビングはアレルゲン粒子で汚染されてしまいます。


これを防ぐには、宇宙船のように、各部屋を独立の区画として、部屋と部屋の間のドアは、常に閉めておくようにします。
玄関のドアを開けても、アレルゲンをたっぷり含んだ外気は玄関の中だけに入ってきて、締め切られたドアで隔離された他の部屋にいくことはありません。そして、玄関の空気清浄機は、つねにフルパワーにしておきます。フルパワーにしたままほったらかしておけば、そのうち、玄関の空気は浄化されます。


花粉抑制機能をうたう高価な空気清浄機のインチキ臭さ


まず、そもそも空気清浄機の花粉除去性能自体は、一台5万円の空気清浄機と8千円の空気清浄機では、さほど性能の差はないのではないかと思われます。
5万円の空気清浄機も、8千円の空気清浄機も、どちらもHEPAフィルターを使っており、粒子除去性能自体にはそれほど差はありません。
では、この価格差は、いったいどこから来ているのでしょう?


高価な空気清浄機の宣伝文句には、たとえばプラズマクラスターイオンで花粉アレルゲンに効果が研究で実証されたの云々とありますが、ネットに公開されている文章等を読む限りでは、かなりインチキ臭いです。


たとえば、この文章によれば、空気清浄機がプラズマクラスターイオンを発生し、プラズマクラスターイオンがアレルゲンタンパク質を切断し、分解消失させることによってアレルゲンを抑制するという作用機序ですが(この作用機序自体はダニアレルゲンに対して確認された)、そもそもスギ花粉アレルゲンであるCryj1とCryj2が単体で空気中を浮遊しているわけではありません。花粉や、オービクル、セキシン、花粉内部のデンプン粒のなどの花粉破片として空気中を浮遊し、Cryj1やCryj2は、それらの内部に組み込まれているわけです。ですから、たとえプラズマクラスターイオンがそれらの粒子と反応し、なんらかの化学的変化を引き起こしたとしても、あくまでそれらの粒子の表面の分子のごく一部を変質させるに過ぎず、それらの粒子の内部のアレルゲン分子であるCryj1やCryj2にまで分解できるとはとても思えません。粒子内部のアレルゲンタンパクを無害化できないのであれば、それが鼻腔内に侵入して、粘液に溶けたときに粒子内部のアレルゲンタンパクが流出し、結局はアレルギー反応を引き起こしてしまったりはしないのでしょうか。また、粒子内部のCryj1とCryj2を全て破壊するほど大量のプラズマクラスターイオンを放出すると、人体への影響が問題となるのではないでしょうか。もし、プラズマクラスターイオンがスギ花粉アレルゲンだけを特異的に破壊し、人間の細胞膜を破壊しないようなものであるとすれば、プラズマクラスターイオンはそれなりに高度な分子的構造をしていなければなりません。しかし、Cryj1やCryj2のような高分子のアレルゲンタンパクに特異的に反応するような分子構造を作り出せるような高度にインテリジェントな機構が空気清浄機に組み込まれているとはとても思えません。ということは、プラズマクラスターイオンがアレルゲンタンパクを分解するとしても、それはアレルゲンタンパクを特異的に分解するのではなく、その化学的活性によって、タンパク質や脂質などの生体有機物であれば、無差別に分子構造を破壊するようなものでしょう。だとすると、それは人間の細胞膜も破壊するわけで、ここにジレンマが発生します。アレルゲンタンパクを破壊する力を上げようとすればするほど、人体への害も大きくなってしまうので、結局は、空気中に浮遊するアレルゲン分子を含んだ粒子を十分に無効化できるほどの濃度のプラズマクラスターイオンを放出すると人体に有害になってしまうので、結局、人体に害のない範囲での、ごく弱い効果しか出せず、実質的な効果はほとんどなくなってしまうのではないでしょうか?


もし、プラズマクラスターイオンが、空気中の細菌を破壊できる、主張するのなら、まだ可能性はあります。なぜなら、それはオゾン発生装置による殺菌と同じような作用機序だからです。そもそも、消毒液で手を洗うとき、その消毒薬に含まれる化学物質の活性は、手に付いたばい菌の細胞を破壊するには十分だが、それが手の皮膚細胞に与える損傷は許容可能な範囲に収める、というように消毒薬の濃度を調整します。ですから、「ばい菌の細胞だけを破壊し、人間への害は許容範囲内」という薬品や装置は、十分にありうるのです。


しかしながら、花粉アレルゲン分子を含有した粒子はばい菌とは異なります。ばい菌の場合、消毒薬に含まれる化学活性をもった分子によって、細胞膜のごく一部に穴を開けられただけで、その細胞の中身が外部に流れ出したり、外部の液体が細胞内部に侵入したりして、その細胞は機能しなくなって、死んでしまいます。
一方、アレルゲン分子を含んだ粒子の場合、化学活性をもった分子で、粒子の表面の一部を破壊されたとしても、粒子の内部のアレルゲン分子は、機能を失うことはないのです。アレルゲン分子を含んだ粒子は、ばい菌のような高度で繊細な構造をもった生命体ではなく、単に特定の種類の分子が混じっているだけの物質の塊に過ぎないのです。
ですから、アレルゲン物質含有粒子の内部にある全てのアレルゲン分子を破壊するほどの強力な化学活性をもったプラズマクラスターイオンを大量発生させたら、人体への影響がないとはとても思えないのです。そして、メーカーさんが、人体への影響がないことをうたっているということは、それはすなわち、たいして効果がないことを意味するのではないでしょうか。



このように、プラズマクラスターイオンのアレルゲン抑制効果は、考えれば考えるほどインチキ臭く思われます。



そして、これはプラズマクラスターイオンに限ったことではありません。
たとえば、後述するように、アレルゲンを吸着するといううたい文句のアレルキャッチャーという素材を使ったフィルターもありますが、電話でその作用機序を問い合わせたところ、少なくとも花粉除去フィルターにその素材を使っても、実質的な効果はほとんどないと思われます(この記事の後の方で詳しく解説しています)。


そういうわけで、少なくとも現時点においては、スギ花粉アレルゲンを除去する現実的に使い物になる機能は、ほぼフィルター機能だけではないかと思われます。


最上グレード掃除機よりもさらに少ないのアレルゲン粒子しか排出しない、超高性能掃除器具


古いor安物のパック式の掃除機は、
花粉アレルゲンをまき散らしている
可能性があると思われます。


前述したように、構造上の問題でパック式掃除機のフィルターの目はかなり粗く、たとえば三洋の標準フィルターは0.5〜1ミクロン粒子が6割程度しか除去できませんから、オービクルのサイズが0.5ミクロンであることを考えると、掃除機をかけると部屋の中には大量の花粉アレルゲン粒子がまき散らされてしまう可能性があり、少なくとも、標準のパックは使わず、ハイグレードのパックを使った方が良さそうです。


一方で、サイクロン式の掃除機は第一段階は遠心分離でゴミをこし取りますので、パック式のように猛烈な勢いで空気をこし取る必要がありません。このため、空気清浄機のように高性能のHEPAフィルターを排気口に取り付けることができます。


たとえば、私が使っているシャープのキレイオンという掃除機は、遠心分離でゴミをこし取った後の排気を、さらにHEPAフィルターでこし取り、最後にもう一つのだめ押しの別のHEPAフィルターを通して排気するという念の入れようで、「排気中の0.3μm以上の微細じんをほぼ100%キャッチ」するとのことです。ここまで来ると、排気の浄化レベルは、空気清浄機とほとんど変わりません。
このキレイオンは音も静かですし、今のところ、申し分ない使い心地です。


しかしながら、このキレイオンにも問題があります。
それは価格です。
現時点でのカカクコムでの最安値で、44780円です。
スギ花粉症の人にとっては、それだけの価値があるとは思うものの、買うのに躊躇するという方もいらっしゃるかも知れません。


そういう方のために、
最高級掃除機よりもはるかに安く、
最高級掃除機よりも少ないアレルゲン物質しかまき散らさず、
最高級掃除機をはるかに凌駕する静音性能
という、究極の掃除器具があります。


それは「ぬれ雑巾」です。


最高級掃除機のHEPAフィルターといえども、排気に含まれるアレルゲン物質をゼロにすることはできません。
しかし、ぬれ雑巾は、そもそも排気自体を

*1:薬を飲んでいても、鼻水鼻づまりになる方は、私以外にも割と多いようですが。

*2:この方自身は現役の研究者ではなく、老後に趣味で走査電子顕微鏡(安い物でも400万円ぐらいする!)を購入して身の回りのいろいろなものを観察しているようです。

*3:免疫電子顕微鏡法とは、電子顕微鏡を利用して組織や細胞内の抗原を観察する方法です。電子顕微鏡で抗原を検出するには抗体を用います。このときに金コロイド、フェリチン、プルオキシダーゼなどの電子密度の高い物質または電子密度の高い反応物を作る物質で抗体を標識させて、可視化させます。

*4:ただし、現状がこうなっているというだけの話で、パック式の掃除機でも、原理的には、複数のフィルターを組み合わせることで、排気が空気清浄機並みのものを作れる可能性があるかもしれません。それをやると構造が複雑になって、価格やメンテナンス性能に問題が出るからやってないだけの可能性もあります。