不況のせいか、長時間&高ストレス労働で身体をこわしてしまう人が増えているようなので、
そうなるまえに、個人で行える待遇改善交渉の事前準備とテクニックを整理してみました。
トピックハイライト
- 知識もないのに考えても無駄。本とネットで知識をゲットするのが先。
- 自分1人で考えてると独り善がりになりがち。情報交換&相談できる仲間をゲットするのが先。
- 素人がヌルいこと考えてても愚かな対応をしてしまう。餅は餅屋。専門家に相談するのが先。
- 上司や会社側の、どの弱みに、どうつけ込み、どう使いこなすか。
- 上司や会社側の利害構造を、どう把握し、どうハックするか。
- 交渉のリスクは他人に押しつけ、自分は安全圏にいて、その果実だけを収穫する方法。
- 額に銃口を突きつけられながら(=失職→家計破綻)では交渉に勝てるわけがない。会社側の武器を無効化するのが先。
- ヤクザが賠償金を脅し取るときに使う武器が有効。
- 上司や会社を、どのような罠に、どうはめるか。
- 降格&減給を戦略的にゲットする。
- 安いプライドを捨てて親や家族を味方に付ける。親と家族みんなで収入ダウンの覚悟を決めれば、腹を据えて戦える。
- 短中長期の収入プランがないと目先の収入喪失を家族が不安がる。まずは戦略&プランを策定する。
- 不況のどん底で安住の地を探すのは愚策。不況の間だけの一時的な避難場所の確保と割り切る。
大前提
待遇改善交渉はめんどくさいです。
それに個人で会社側に無理に要求を押し通すようなことをやると、たとえ待遇改善を勝ち取ったとしても、やっかいでめんどくさい人間だと誤解(or正解)されたり、職場に居づらい雰囲気になってしまうリスクがあります。
そのリスクを回避しつつ交渉となると、要求を押し通すというより会社側とWin-Winになるような待遇改善交渉をせざるをえませんが、それをやりようのない状況もけっこうあります。
なので、まともな労働組合があるのなら、待遇改善交渉は組合に任せておいた方がいいと思います。
あるいは、転職できるならさっさと転職しちゃう方が簡単です。
フリーで食っていける人はフリーになっちゃった方がいいです。
実家に居候させてもらったり伴侶に養ってもらえる人は、景気が回復するまで家で勉強や資格取得でもしていた方がいいです。
十分な貯金のある人は、景気が回復するまで貯金を食いつぶしながら職業訓練でも受けていた方がいいです。
起業して勝算のある人は、起業しちゃった方がいいです。
しかし、それらのどれも困難or避けたい事情がある人は、最悪、今の職場に居づらくなってしまうリスクを覚悟で、ダメモトで待遇改善交渉をやってみるというのもアリだと思います。
なぜなら、後述するように、ブラック労働環境に居続けるリスクの方が、職場に居づらくなったりドロップアウトしてしまうリスクより大きいことも多いからです。
まずはブラック職場の情報交換ができるSNSに参加する
ブラックな労働環境と戦うには、具体的な知識と知恵と勇気がたっぷり必要ですが、自分1人で思い悩んでいても知識は増えませんし、知恵も勇気もたかが知れています。
なので、まずは各人が得た具体的な知識と知恵を持ち寄って、情報交換することでお互いの知識武装を強化するのが良策です。
それらのための場所としては、サバイブSNSが適していると思います。
この際、サバイブSNSが本来何を目的としたSNSであるかは、どうでもいいことです。
重要なのは、「そこに、実際にブラックな労働環境を経験した人達や、それを切り抜けてきた人達が集まっていて、かつ、それを切り抜けるための情報交換をすることを許容する雰囲気がある」ということです。
http://survive-sns.jp/
とりあえず、ここにユーザ登録するのが、最初の一手としてよいと思います。
登録には3分もかかりません。
悩むより、本とネットから知識をゲットするのが先決
「ない知恵を絞る」という表現がありますが、知識のない状態で「ない知恵」を絞ってもろくなものはでてきません。ないものはないんです。
だから、悩んでないで、まずは本とネットから知識を得ることが先決です。
たとえば、ネットで検索すれば以下のようなサイトがけっこう見つかります。
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/sodansitu/qa/qa_mokuji.html
http://www6.ocn.ne.jp/~kurouren/sub3.htm
また、大きな本屋の、労働トラブルや職場トラブルの本のコーナーに行けば、この手の本が並んでいます。
労働トラブル相談日誌 この給料、契約と違うじゃん! (単行本)
自分で考えるより、専門家に相談するのが先
この手の問題は、素人が自分の頭で考えるだけでは、愚かな行動をしてしまいがちです。
やっぱり、餅は餅屋、まずは専門家に相談しながら対策を練っていく方が良策です。
予備知識を仕入れる余裕すらないほどせっぱ詰まった人は、とりあえず電話しちゃってみてください。
http://www.rodosodan.org/
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
もちろん、なんの予備知識もなしにいきなり相談するより、基礎的な知識はあらかじめ自分で勉強し、自分なりに問題点を整理した上で相談した方が、早い段階で踏み込んだ相談ができ、効率がよいです。
なので、本とネットである程度情報を仕入れ、自分なりに相談すべき内容をまとめてから、労働相談センター等に相談する余裕があるのなら、その方がいいです。
有能な社員やムードメーカーを攻略されると、会社は逆らいにくくなる
他の有能な社員やムードメーカーを味方に取り込むと、会社のキンタマを握った状態になります。
まず、上司や会社は有能な社員に抜けられると大きな痛手なわけで、有能な社員に会社に居着いてもらいたいと切実に思っています。
だから、その有能な社員と仲の良い社員がいたら、会社側はその人と揉めるのを避けようとします。有能な社員に会社の悪口を吹き込まれるのが怖いからです。
また、多くの社員の信頼を勝ち得ているムードメーカー的な社員と揉めることも、会社は避けようとします。そういう人と揉めると、会社への疑心暗鬼が社員の間に広まり、他の有能な社員が連鎖的に辞めていったりしかねないからです。
なので、会社側に待遇改善を交渉するときには、そういう有能な社員やムードメーカーを味方に引き入れておくことが効果的です。
会社は有能な社員やムードメーカーを含む人達が待遇改善交渉をしてきたら、
気軽に「イヤなら辞めろ」とは言えない
からです。
「会社も上司も揉め事を避けたい」という弱点を人質に取る
「会社や上司は、従業員と揉めるのを恐れている」という弱点も、交渉のカードとして使えます。
会社や上司は、従業員と揉め事を起こしていることを、上司の上司や、他部署や、経営幹部や、取引先や、株主や、投資家や、業界に知られるのを嫌がることが多いです。(既に失うものがほとんどないほど最底辺の中小零細企業や、破綻寸前or崩壊寸前の企業や、既に悪評が立ちまくりでそれ以上評判が悪化しようがないほどブラックな企業や、確信犯の筋金入りブラック企業は別)
なぜかというと、ビジネスでは誰もがやっかいごとを避けようとしていて、やっかいごとの可能性が少しあるだけで、念のため別の取引先にしておいたり、投資を控えたり、別の人間を部署の管理者にしたり、採用活動に支障を来したり、他の社員に疑心暗鬼を引き起こして有能な社員に転職されたりということが、よくあるからです。
だから、待遇改善のために上司や会社側と交渉するときは、
「あんた、揉めたくねえんだろw 揉めてることがあちこちに知れ渡ると困るんだろw だったら、オレのいうこときけよ。」
という脅迫を、脅迫だという証拠をつかまれないように、それとなく相手に悟らせる方法が効果がある場合があります。
ただし、あまり露骨なことをやってしっぽをつかまえられると、自分の立場&キャリア&人脈を汚すことになるので要注意です。
あくまで、「あの人が被害妄想を膨らませただけですよ。私はことを荒立てるつもりは毛頭なく、極力穏便に済まそうと努力したんですよ。」と、交渉が終わったあとに言いつくろえる余地を残しながら、「こいつは本気でやばいことをやりかねない」と交渉相手に思わせるようにします。
汚れ仕事は他人にやらせる
この手の待遇改善交渉を率先してやると、成功しても失敗しても、会社から目を付けられたり、
他の社員にも、そういう「こすっからい」立ち回りをする油断ならない人間だと思われるので、何かと損です。
なので、それと悟られないように、他の社員の不満を煽り、被害妄想を抱かせ、誘導し、
他の社員に待遇改善交渉をやらせることができれば、それが一番の理想形態です。
そして、他の社員が自ら動き出したら、自分自身は動かず、要所要所で入れ知恵をしたり、誘導したりするようにします。
そして、まるで自分は主役ではなく、他の社員が待遇改善交渉をするので、
なんとなく雰囲気に流されていただけの、無害な人物を装っておきます。
そもそもこういう交渉は、他の有能な社員にやってもらうのが一番よいのです。
理由は以下のようなものです。
- 会社は有能な社員を失いたくないので、有能な社員が交渉の前面に立つと会社側も譲歩しがちです。
- そういう有能な社員は頭が切れるし、リーダー格なことも多いので、不満を持っている社員たちを取り仕切って交渉のまとめ役になることが出来ます。
- 有能な社員は頼られ慣れているので、他人が「僕にはこんな難しそうな交渉はとてもできそうにないんです。あなたにお願いするしかないんです。」と頼ってこられると、損な役回りであることは重々承知していても、ついついいつものクセで頼まれてしまうからです。
- そういう有能な社員は、最悪、会社と対立してクビになっても、他に転職先が見つかるので、交渉に失敗しても大して痛手ではありません。
- 転職先が見つかりやすい有能な社員はクビがあまり怖くないので、強気で交渉できます。
- 有能な社員ほど仕事が集中しやすいので、長時間労働を強いられて、待遇を改善してもらいたいと思っていることがけっこうあります。
- 有能な社員ほど、上層部とコミュニケーションをとる機会が多く、会社側の事情もよく理解しているので、会社側が譲歩可能な待遇改善案を提案することができます。
ただ、一方で、有能な社員ほど経営サイドに近いことが多く、従業員よりも、経営サイド寄りの見方をする傾向もあるし、経営サイドに懐柔されて、寝返られるリスクも大きくなるので、交渉役としてどの社員を焚きつけるかの人選は、状況によっていろいろな要素を天秤にかけながら、総合的に判断することになると思います。
上司や会社側を追いつめすぎると危険
相手の事情を一切無視して、あまりに無理な要求を押し通そうとすると、上司も会社も大出血を覚悟で大なたを振るってくることがあるので、要注意です。
とくに下請けの中小零細企業などの場合、そもそも従業員がかなり無理な低賃金&長時間労働をすることでしか採算がとれないような事業構造になっていることがよくあります。
そういう状況で「休みたいときに休める、適切なワークバランス」をごり押ししても、会社側にとっては無理難題としか言いようがなく、そういう場合は、もう、痛手だろうがなんだろうが、何人かの従業員をごっそり入れ替えるしか生き残る道はない、と会社側が決断する可能性があります。
こういう状況では、会社がのむことの出来るギリギリの範囲に、待遇改善要求を留めておくしかありません。もしくは、転職するか。
こういう、本来なら何をやっても元々採算の合わない会社が、従業員の低賃金&長時間労働で無理やり経営を維持している場合、待遇改善交渉をするだけ不毛なので、そういう会社は可能な限り早く見捨てた方がいいです。転職先が見つからない場合、失業保険と生活保護で食いつなぐ方がマシなことすらあると思います。
会社側にもメリットのある待遇改善要求を出す
会社側の事情と従業員の待遇改善は、必ずしもトレードオフでもゼロサムゲームでもありません。
会社側のわずかな譲歩で、待遇が大きく改善することもあります。
そういう、コストパフォーマンスの良い待遇改善なら、会社側も要求をのみやすくなります。
というか、実際には、会社側も従業員も両方とも大きく得するような、Win-Winの交渉が可能なことの方がずっと多かったりします。
たとえば、不必要に過剰な叱責・パワハラ・セクハラで従業員に精神的ダメージを与える上司や、顧客に安請け合いしてしょっちゅうデスマーチを引き起こす営業や上司や、部下に間違った指示だしをして無駄な仕事をさせる上司を排除することは、会社側とはWin-Winになることが多いです。
過剰な叱責・パワハラ・セクハラをすると、利益率が上がるどころか、むしろ部下の生産性が落ちて会社の利益率は下がりますし、デスマーチというのは、徹夜が繰り返されたり、設計ミスが起きてやり直しが発生したりでスケジュールが遅れ、顧客も損失を被るし、経営側としても非能率な赤字プロジェクトになることが多く、誰も得しません。
こういう場合、プロジェクトの中の「まともな」人間同士が結託して、上司の上司や、経営幹部や、顧客に根回しして、そういう無能な上司や営業を排除し、まともな人間にクビをすげ替えるのが得策です。
多くの場合、これだけで劣悪な労働環境は劇的に改善されます。
有能な上司は特効薬
世の中的にブラック会社と言われるものの正体は、多くの場合、実際には「ブラック上司」だったり「ブラック社長」だったりすることの方が多いように思えます。会社というより、単にリーダーがブラックなのです。
たとえば「優秀な管理職が会社に転職してくる」というだけで、劇的に労働環境が良くなることがあります。
信じられないぐらいあっさりと、徹夜が減り、休日出勤が減り、トラブルが減り、顧客の心証が良くなり、プロジェクトの雰囲気も良くなります。
デスマーチが引き起こされるとき、上司も顧客もヌルいことが多いです。
顧客は、そもそも顧客自身が何を要求しているのか理解しておらず、
納品物がかなり出来あがってしまってから要求を行き当たりばったりに変えて
しかも、納期も予算も増やさず、そのしわ寄せが現場の従業員に来ることで、
劣悪な労働環境が作られたりします。
しかし、有能な上司というのは、顧客自身が何をほんとに望んでいるのかを顧客に理解させ、
それを要件定義に落とし込み、顧客が満足し、かつ、コストもかからないような成果物に落とし込んだりします。
無理なスケジュールを約束してデスマーチを引き起こすようなことも、ゼロにはなりませんが格段に少なくなったりします。
額に銃口を突きつけられながらでは、交渉に勝てるわけがない
会社側が、有能な社員に辞められたり、従業員と揉めるのを恐れているように、従業員も、
「失職したら家計が破綻して路頭に迷う。」
ということを恐れています。
だから、待遇改善交渉というのは、従業員と会社側がお互い相手の銃口に怯えながらの交渉になります。
お互いがお互いの弱みにつけ込みながら、自分の弱みにつけ込まれるのを嫌がるわけです。
だから、これは、相手の弱みを最大限えぐるのと同時に、
自分の弱みをどこまで無効化できるか、というゲームになります。
従業員側の弱みを無効化するには、
解雇に関する法的&行政的な知識を身につけておくこともありますが、
究極的には、
「失職しても家計が破綻しない」
ようにしておくことが最も強力です。
これだけで、自分の額に突きつけられた拳銃を取り除くことができますから、
かなり強気で交渉できるようになります。
古い企業の中には、このことをよく知っているところがよくあります。
彼らは、たとえば男性の従業員に、住居をローンで購入してもらい、結婚し、奥さんには会社を辞めて専業主婦になってもらい、子供を作ってもらうと、非常にありがたいと考えていたりします。
交渉上、有利になるからです。
ようするに、従業員は、削減できない固定費があまりに大きい場合、失職した場合の家計破綻リスクが大きすぎて、会社に逆らえなくなるわけです。
額に突きつけられた銃口にホールドアップし、どんなに劣悪な労働環境でも堪え忍ばなければならなくなるわけです。
有利な立場で交渉できるようにする
上記を踏まえると、会社側との交渉で有利な立場に立ちたいなら、以下のことが重要になります。
- 住居を長期ローンで買わない。
- 住居だけでなく、そもそも車などの高額商品をローンで買わない。
- できるだけ多く貯金を蓄えておく。
- いざ失職した場合の転職先のツテを、あちこちに作っておく。
- 結婚しても仕事を辞めない異性と結婚するか、いざというときに働いて家計を支えられる異性と結婚する。
- もしくは、結婚しない。
- 会社からの給料に依存した今の生活レベルへの未練を捨てる。
- いざとなったら失業保険や生活保護で暮らす覚悟を決める。
- 普段から失業保険や生活保護の有利な受給テクニックを勉強しておく。
- 大幅な収入減になった場合、生活を切り詰めることを家族と話し合って合意を得ておく。
- 最悪の場合、両親の支援を受けられるように、あらかじめ話をつけておく。
- 安い賃貸の部屋に引っ越す。
- 金のかかる趣味(ex.外食グルメ)を控え、金のかからない趣味(ex.料理)に切り換える。
- 少しでも別の収入源を確保しておく。
これらをしっかり準備しておけば、
「交渉に失敗した場合、最悪失職してもかまわない」
という覚悟を持って、交渉に臨むことができるため、強気で踏み込んだ交渉ができるようになります。
要するに、
「オレの武器は、お前に大損害を与えることが出来るが、
お前の武器はオレにはたいして効果はない。」
という、有利な立場で交渉できる
わけです。
交渉というのは、たいてい、
「いつでも交渉の席を立てる」
方が圧倒的に有利に進めるものなので。
ブラック労働環境に居続けることのリスク計算を間違えると酷いことになる
万一、ブラック労働環境のせいでうつをこじらせてしまうと、キャリアが深刻なダメージを負い、生涯賃金が激下がりしかねません。
うつをこじらせると、何年もの間「イザというときの無理」ができなくなることがあるからです。
イザというときに無理のきかない人は労働者としての市場価値が大きく下がります。
ごく健全で快適な労働環境であっても、なにかの手違いでトラブルが起こることを完全に防ぐことは不可能です。
万一トラブルがあったとき、無理してでもなんとか辻褄を合わせることのできる人でないと、
会社は重要な仕事を安心して任せることができません。
「イザという時無理ができる能力」というのは極めて重要な保険なのです。
なので、うつをこじらせて無理の利かない身体になってしまうと、その保険がなくなってしまい、
労働者としての価値が大きく毀損されてしまうのです。
そうなると、景気が良くなってもなかなか良い仕事はもらえなくなったり、
年収も大きく下がることになりかねません。
その意味で、ブラック労働環境で働き続けるということは、極めて大きなリスクを抱えた、
非常に危ないギャンブルです。
ドロップアウトした方がむしろリスクは小さくなることも
「今の会社を辞めてしまうと、いまよりもずっと低い年収のつまらない職しか得られないのではないか。」
と不安がってブラック労働環境にいつまでも居続ける人がいます。
要するに、ドロップアウトが怖くて、ブラック労働環境にしがみついちゃう人達です。
しかしながら、長時間&高ストレス労働でうつをこじらせるリスクと、
ドロップアウトしていまより年収や仕事内容のランクが下がるリスクを比べると、
どちらのリスクが大きいのか、冷静に比較分析して、天秤にかけた方がいいと思います。
そもそも、ブラック労働環境に居続ける人は、ブラック労働環境にいるリスクを過小評価し、
ドロップアウトするリスクを過大評価する傾向にあるように思えます。
実際には、ドロップアウトしちゃっても、そこそこの年収と、そこそこの仕事で、それなりに幸せそうに暮らしている人達は結構います。
ブラック労働環境のせいで、うつをこじらせて、結局退職してしまった人達より、はるかに幸せそうだったりします。
安い年収だと、それほどものすごい成果を期待されることもなくなり、ずいぶんとプレッシャーが少なくなるというのも原因の一つだと思います。
だから、闇雲にドロップアウトを恐れてブラック労働環境に居続けるより、
「明日は明日の風が吹く」
と、軽いノリでドロップアウトしてしまった方が、賢い選択であることも多い、
ということは、念頭に置いて判断すべきだと思います。
武器を増やす
待遇改善交渉をするときは、武器は多ければ多いほどいいです。
しかし、単に闇雲に武器を増やせばいいというものでもなくて、強力な武器を優先してそろえておくのが吉です。
ざっと思いつくところでは、以下のものがあります。
- 診断書
- メール
- 作業記録
- ICレコーダー
ヤクザが賠償金を脅し取るときに使う武器
やはり、一番強力な武器は診断書だと思います。
劣悪な労働環境にいると、ストレスから不眠症になったり、うつになったりする方がいますが、
そのときこそ、最強の武器を手に入れるチャンスです。
その場合、できるだけ速やかに心療内科等に行き、治療を受けると同時に、診断書をゲットするようにした方がいいと思います。
診断書は、具体的な被害があったことを証明する強力な武器になりますから。
ヤクザが相手に殴らせておいて、カモの家に損害賠償を請求しに乗り込むときも、診断書を武器として使いますよね。
上司を罠にはめる
上司を罠にはめるために最も効果的なツールは、メールだと思います。
セクハラやパワハラをする上司がいたら、その上司がメールでセクハラやパワハラをするように、巧妙にし向ける方法があります。
このとき、こちらが変なメールを出して挑発したなどの証拠を残さないようにします。上司だけが一方的にメールでパワハラしたりセクハラするようにし向けることが肝心です。
特に、女性の部下と男性上司の組み合わせの場合、誰の目にも言い訳のしようのないヤバイメールになることが珍しくなく、この方法は効果的です。
上司を罠にかけようと待ちかまえていると、
マヌケな上司がセクハラメールを送ってくるたびに、小躍りしたくなるほど嬉しくなったりするかもです。
せっかく診断書までもらっておきながら、うつが治ってしまうかも知れません。
とくにセクハラの場合、このメールは、いろいろ使いやすい武器です。
上司の上司や経営幹部に根回しするときも、言い訳のしようがないヤバイメールに見えますので、そのメールをプリントアウトしたものを根回しの場所に持っていけば、相手の顔色がみるみる変わっていくのを鑑賞して楽しむことが出来たりします。
記録する
普段から仕事の開始終了時刻は、分単位で精密に付けておくべきです。
ブラックとまではいかなくても、少しでもきつい状況になったら、精密な記録は絶対にやっておいた方がいいです。
また、上司からの作業指示や、自分が行った作業内容も、無理のない範囲で、できるかぎり細かく記録しておきます。
裁判に限らず、あらゆる交渉の席では、具体的で精密で正確な数字を語る人間の言葉の方が、圧倒的な説得力を持ちます。
記録があれば、労働基準監督署に訴えるときも有利になりますし、訴訟のときも有利になります。
また、上司の上司に根回しをするという局面においても、上司の上司がはじめから理屈抜きで上司の方を信用して、はなっから従業員を潰しにかかっているときは戦法を変えなければなりませんが、常にそんな状況ばかりとは限りません。
上司が、上司の上司に取り入って誤魔化すのがいくらうまくても、上司の出した愚かな指示のおかげで現場が無駄な仕事をして、会社に損害を与えていることが、精密で具体的な証拠によって裏付けられた場合、会社を守りたい上司の上司が、上司を切る決断をする、というのも、十分にありうるシナリオだとおもいます。
このように、作業記録を残しておくことは、いろんな局面で、有効な武器となります。
ICレコーダー
もちろん、同意を得て録音をするなどということは現実的ではありませんが、
隠し録音でも十分にいろんな局面で武器となると思います。
まず、上司の上司や会社の幹部に根回しするときも、ICレコーダーからセクハラ発言のうごかぬ証拠が飛び出してきたら、強力な説得力を持つようになります。
そもそも、会社の幹部は、この音声ファイルが会社の外部に漏れたらと考えると気が気ではないでしょう。
もちろん、これもいろんな局面で使うことの出来る強力な武器です。
そして、これを使うと、相手から決定的な一言を巧妙に引き出すのが楽しくてたまらなくなります。
ただ、問題は、隠し録音がばれるリスクがあるということです。
隠し録音をするときは、十分に注意してやった方がいいと思います。
戦略的に降格&減給をゲットしにいく
無理な長時間労働やサービス残業の究極的な原因が、
「給料が高すぎるために、そういうブラックな労働をしてもらわないと、会社の採算が合わない」
というものであるケースがあります。
実際、過去にいろいろ偶然が重なって手柄を立てて会社側に実力以上に評価されてしまい、実力以上に昇進&昇給してしまったために、ブラック労働しないと採算が合わなくなってしまっている、というケースです。
こういうケースでは、会社側が降格&減給すると本人がプライドを傷つけられてモチベーションダウンしてしまうので、会社側も降格&減給しにくく、ひたすら無茶なブラック労働をさせて収支の辻褄を合わせる、ということがずるずると続き、やがては、その人が負担に耐えきれなくなって、鬱になったり、身体をこわしたりして退職していったりします。
こういう罠にはまってしまった場合、つまらないプライドは捨てて、自ら会社側に降格&減給を申し出る方が、結局は不幸にならずに済むこともあります。
いったん鬱になってしまうと、何年も引きずるケースもあって、キャリアが台無しになってしまいかねません。
それよりも、自ら降格&減給してもらって、それと引き替えに、長時間労働もサービス残業もなしにする、という交渉をした方が賢いケースがあります。もちろん、上司や会社次第なので、ケースバイケースですが。
短中長期の収入プランを作っておく
「交渉のなりゆきによっては失職する可能性があるので、
家賃の安い場所に引っ越すなど、生活コストの削減に協力して欲しい」と家族を説得するとき、
まったく将来の見通しを示さないまま、
「失職した場合に生活がどうなるか分からない」
というのでは、家族は不安がって、そんな危ないことはやめてくれと言うかも知れません。
あるいは、独身の人が、両親に対し、
「交渉のなりゆきによっては失職する可能性があるので、
失職した場合、実家にしばらく居候させて欲しい。」
と交渉する場合、
「それで辞めてどうするつもりなの?」
という両親の不安に答えることができなければ、協力を得にくい場合があります。
なので、両親や家族に協力を仰ぐ前に、
短期、中期、長期の収入プランを立てておくべきだと思います。
たとえば、まず、短期的には失業保険で食いつなぎながら、
家賃の安いところに引っ越し、転職先を探しつつ、キャリアアップのための勉強や資格取得をする。
失業保険が切れた後は、貯金を取り崩しながら、職業訓練校に通うなり、キャリアアップの勉強なりをしつつ、
やはり転職先を探す。
そうしているうちに、景気も回復して求人も増えるだろうから、就職も決まるだろう。
生活コストは十分に抑えてあるし、貯金もこのくらいあるので、
景気が回復するまでは十分に耐えられる。
などなど。
不況の間だけの、一時的な避難場所と割り切る
不景気の時に見つかる転職先なんて、どこもかしこもブラックだらけで、
まともな職場なんてろくにありません。
なので、不況の時の職探しは、何年も働けるような安住の地を探すのではなく、
不況の嵐が吹き荒れている間だけの、一時的な避難場所と割り切って探すくらいでちょうどよいかと思われます。
景気の良いときだけ働く
そもそも、不況になると一気にブラック化する職場が増えるのですから、
不況で職場環境が劣悪になってきたら、さっさと辞めてしまい、
たまにフリーランスで細切れの仕事でもやりながら、
基本的には貯金を食いつぶしながら、勉強したり遊んだりしながら優雅に過ごし、
景気が回復するのを待つ、というスタイルも解決方法としては、理にかなっていると思います。
これを確信犯的に実行するために、
景気の良いときも、家賃の安い部屋で低コストな生活をして、
給料の大半を貯金して、ひたすら貯金を積み上げるようにします。
つまり、景気変動に合わせて、ひたすら働いて貯金を積み上げる時期と、
貯金を取り崩しながらのんびりブラブラしている時期を交互に繰り返すわけです。
極端な場合、景気が悪い間は、生活費の安い国でブラブラ遊んでいる、という手もあります。
何年か前に私がネパールのポカラに行ったときは、たしか一泊2ドルという看板の出ていたドミトリーがありました。
また、その近所の日本食屋に言ったら、日本のマンガなどが散乱していて、日本語がいろいろ書き込まれた訪問帳などがあり、現地で安く長期滞在している日本人のたまり場になっているようでした。
そもそも、必死こいて自力で劣悪な労働環境と戦うこと自体、
あまりスジのよい方法じゃないです。
究極的には、劣悪な労働環境と戦う努力自体を必要なくしてしまうのが、
もっとも賢い戦略なのではないでしょうか。
獲得した権力をどう行使するか
上記のテクニックで、会社側の弱みを握ったり、会社側が逆らいにくい状況を作ると、ある種の権力を握った状態になります。
ひとたび権力を握ると、それを使って、いろいろな局面で待遇改善を行うことが出来ます。
以下、待遇改善行動の具体例に、軽く触れてみます。
無理な約束はしない
基本的には、毎日定時に帰っても終わる分量の仕事しか引き受けないようにします。
上司が、毎日定時に帰っていては終わらない分量の仕事を要求してきたら、量を減らすか、納期を延ばすように交渉します。
「残業すれば出来るだろ?」とごり押ししてきたら、
「予想外のトラブルが起きたときのために、バッファを見ておくべきです。
はじめから残業や休出前提でスケジュールを組んでおいて、トラブルが出たら、納期に間に合わず、お客さんに迷惑をかけることになります。万一のトラブルに備えて、十分に余裕をもったスケジュールにすべきです。」
などと正論を述べて、理屈でぐいぐい押していきます。
「他のヤツだったら、この仕様とこのスケジュールでも納期に間に合う」
とか言ってきたら
「じゃあ、その人に頼んでください。私は責任持てません。」
と、はねつけます。
そのようにして、十分に余裕を持った仕事量と納期で仕事を引き受け、
実際になんかのトラブルが起きたら、残業や休日出勤をして納期に間に合わせます。
そして、
「余裕をもったスケジュールを設定していたから、予想外のトラブルにもかかわらず、納期に間に合ったんですよ。
最初からギリギリのスケジュールにしていたら、残業や休出をしても納期に間に合わず、
お客さんにも会社にも大損害をもたらしていたところです。」
ということを、部下、同僚、上司、上司の上司を含めて多くの人にアピールし、認識させ、
以降も、余裕をもったスケジュールでしか仕事を引き受けない、ということの正当化を徹底するようにします。
降格、減給、閑職を恐れない
上司の要求をはねつけ続けると、上司は面白い仕事を回してくれなくなったりします。
また、減給されたり、降格されたりすることもあると思います。
しかし、それらを恐れてはいけません。
いくら面白くてやりがいのある仕事を回してもらえても、無理な納期を約束して、無理な長時間労働をしたあげく、うつ病になったりしたら、何年も引きずることになります。
それよりも、不況の間だけだと割り切って、つまらない仕事を淡々とこなして、毎日定時で帰り、家に帰ってからキャリアアップのための勉強でもしていた方が、長期的に見て得です。
いったん上司から融通の利かない人間だと思われると、基本的には出世はないと思った方がいいです。
なので、景気が回復してきたら、精力的に転職先を探すようにします。
無駄な責任感を捨てる
「自分の担当するプロジェクトの責任があるから辞められない」という人がよくいますが、
たいていは、それは単なる妄想です。
実際には、あなたの代わりなどいくらでもいます。
首相ですら、辞めても代わりはいます。
辞めたければ、明日から職場に行かなければいいだけです。
究極、引き継ぎなんてしなくていいです。
あなたが抜けたためにそのプロジェクトが納期を守れなかったとしても、崩壊したとしても、
会社やお客さんは、一時的には損失が出て困るかも知れませんが
あなたが抜けた穴は、組織がどこからか人を引っ張ってきて、なんとかしてしまうことが多いです。
そもそも1年たったら思い出すことすらしなくなったりします。
おしまい
他にもいろいろありそうですが、なんだか書くのに飽きてきたので、この辺でおしまいします。
Good Luck!